(1)連結子法人が連結納税グループから離脱する場合

大別して次のA.B.の2つの場合がある。

なお、連結納税取止めの場合におけるC.申請による承認は離脱にはない。

つまり、連結子法人が単独で離脱の申請をすることは認められない。

 

A.国税庁長官による職権取消し

取消しとなる事実

連結子法人に次のいずれかの事実が認められる場合をいう。

これは、連結納税取止めの事実とほぼ同じである。

ただし、連結親法人に認められる法4の5第1項4号は、連結子法人は連結確定申告書を提出するわけではないので該当がない。

 

B.みなし承認取消し

取消しとみなされる事実

連結子法人に次のいずれかの事実が認められる場合をいう。

(※1)連結子法人が合併による解散の例

(連結子法人が被合併法人となる離脱)

イ.連結親法人又は他の連結子法人によるグループ内合併

 

ロ.外部の法人による吸収合併

 

(※2)連結子法人の残余財産が確定した場合

 

(※3)連結親法人との間に連結完全支配関係を有しなくなる場合

下記の場合においてもすべて100%子法人ではなくなるが、ここでの「連結完全支配関係がなくなる場合は、下記に該当する場合を除く狭義の意味である。

例えば、連結子法人が合併によって解散(被合併法人)した場合には、連結子法人は消滅し、連結親法人の100%子法人ではなくなるが、この場合は上記①を事由としてみなし承認取消しされて連結納税から離脱することとなる。

また、連結納税取止めの場合は、すべての連結法人間の連結完全支配関係はなくなることになる。

以上を整理すると次のようになる。

 

 

イ.連結子法人株式の一部又は全部が連結納税グループ外に売却された場合

(参考)連結子法人株式が連結納税グループ内で売却された場合は該当しない。

以上の連結子法人株式の外部への売却の他にも、組織再編に伴い、連結親法人との間の連結完全支配関係を有しなくなる場合がある。

 

ロ.連結子法人による外部の法人を合併した場合

 

ハ.外部の法人による合併で、被合併法人となる連結子法人が100%保有の他の連結子法人を有している場合

S₂社、S₃社共に連結納税グループから離脱することになるが、S₂社は(※1)ロ.で述べたように連結子法人が合併解散により離脱することになるが、S₃社は合併によって解散するわけではなく、連結親法人との100%保有でなくなるため離脱することになる。このように、離脱することは同じであるが、離脱の事由を異にする。

 

二.外部法人との共同新設分社型分割

P社の分割の対象資産の中にS₂社株式が含まれている場合には、連結親法人による100%保有関係はなくなるため離脱することになる。

 

ホ.外部法人からの吸収分社型分割

S₁社は分割の対価としてA社にS₁株式を交付(新株発行)することから、連結親法人との間の100%保有関係はなくなるため離脱することになる。

 

 

(2)手続き

(※)取消し手続き

改めて申請を行う等の必要はなく、自動的に連結子法人は連結納税の承認が取消されたものとみなされる。

ただし、以下の場合のみ届出書の提出が必要である。

 

 

(3)離脱の効力発生時期と事業年度

 

A. 国税庁長官による職権取消し

連結納税の承認を取り消された連結子法人(連結親法人はそのまま)は、承認取消し日の前日までのみなし事業年度を設けて連結法人としての単体申告(注)を行う。

(法15の2①一)。

 

(注)連結法人としての単体申告

「連結法人としての単体申告」とは、連結納税の承認は有効であっても他の連結法人と申告の時期が異なることからその法人単体で申告することをいう。

なお、この場合、単体申告ではあるが、一部は連結法人としての適用がある。

つまり、所得の合算等、連結申告しなくては適用できない項目は適用できないが、その他の項目は適用される。

例えば、連結納税グループ内の金銭債権に対する貸倒引当金の繰入は不可とする規定などは適用される。

承認取消し日以降は通常の単体申告に戻る。

ただし、単体納税に戻った後も親法人と事業年度の一致しない法人については、一事業年度は各子法人独自の事業年度(×1.7.1~×1.12.31)ではなく、連結事業年度となるはずだった期間(×1.7.1~×2.3.31)で区切って単体申告を行うことになる。

 

B.みなし承認取消し

例えば、連結子法人が合併により解散をした場合には、その連結子法人は合併の日に連結納税の承認が取り消されたものとみなされ(法4の5②四)、その開始日から合併の日の前日までは連結法人としての単体申告(注)を行う(法14十、15の2①二)。

(注)「連結法人としての単体申告」については、A.国税庁長官による職権取消しの所で述べてある( ページ参照)。

 

次に、連結子法人と連結親法人との間に連結完全支配関係がなくなった場合には、その連結子法人は、その関係がなくなった日に連結納税の承認が取り消されたものとみなされる(法4の5②五)。

そのため、その事業年度開始の日から関係がなくなった日の前日までの期間は連結法人としての単体申告を行う(法14八、15の2①三)。

関係がなくなった日以降は、通常の単体申告に戻る。

ただし、単体納税に戻った後も親法人と事業年度の一致しない法人については、一事業年度は各子法人独自の事業年度(×1.7.1~×1.12.31)ではなく、連結事業年度となるはずだった期間(×1.7.1~×2.3.31)で区切って単体申告を行うことになる。

 

 

(4)時価評価

連結納税から離脱する場合は、その連結子法人の保有資産について、時価評価は行われない。

(※)時価評価不要の理由

「Ⅲ-3.連結納税の取止め(4)時価評価」参照(  ページ)。

 

 

(5)連結欠損金の引継ぎ

(※1)連結子法人が帳簿の不備等により国税庁長官の職権で連結納税の承認が取消された場合は、制裁的な意味を含め、その法人に帰属する連結欠損金は引継ぐことはできない。

 

(※2)引継ぎ可能な連結欠損金(特定連結欠損金も含む)

連結納税離脱の日の属する連結事業年度終了の日の翌日の属する事業年度(翌期)開始の日前10年以内に開始した連結事業年度において発生した連結欠損金で、各法人への帰属額(連結欠損金個別帰属額)である。

 

 

(6)連結納税開始・加入時において切捨てられた欠損金の復活

(※)①原則として連結納税から離脱した場合

   切捨てられた欠損金が復活することはないが、

 

  ②例外として、1回も連結納税に参加していなければ復活する(ただし、A.の場合は青色申告の承認が取消される(法127②)ため、実質的に使用は不可能となる)。

 

<連結グループ外に離脱の場合>

さらに、②の例外として、1回も連結納税に参加していなくとも連結納税グループ外に出ない場合は、連結納税開始前の繰越欠損金を使用することはできない(つまり、上記①同様に復活しない)。

 

<連結グループ外に出ない離脱の場合>

 

 

(7)離脱後5年間再開始のメンバーとなれるか又、他の連結納税グループに加入できるか

(※1)帳簿の不備等により承認を取消された連結子法人は、その取消しの日から5年を経過する日の属する事業年度終了日までは、連結親法人になることも、連結子法人となることもできない。

これは、帳簿の不備等により連結納税を取消された法人については、制裁的な意味合いがある。

 

(※2)原則として連結納税への加入は制限されていない。

なお、連結子法人が破産手続開始の決定により解散したことにより、その子法人が発行済株式を保有する他の連結子法人が離脱した場合には、その他の連結子法人には上記③の再加入制限はない(令14の6①カッコ書)。

 

 

(8)繰延譲渡損益の戻入れ

(※1)譲渡法人と譲受法人との間の完全支配関係には影響がないため。

 

(※2)完全支配関係がなくなった日(離脱日)の前日の属する連結事業年度において戻入れ処理する。

 

 

(9)連結納税からの離脱に伴う青色申告の取扱い

1.連結納税開始前の青色申告の承認の有効性

 

2.青色申告の承認申請を新たにした場合の取扱い

 

 

(10)連結納税から離脱に伴う連結子法人株式の帳簿価額の修正

連結子法人が連結納税から離脱する場合には、その連結子法人株式の株主であるすべての連結法人において、その株式の税務上の帳簿価額を修正する必要がある。

また、離脱する連結子法人が他の連結子法人(連結親法人からみれば連結孫法人)の株式を保有していた場合には、その連結孫法人も通常は連結納税から離脱するので、連結孫法人の株主であったすべての連結法人においてその帳簿価額を修正する必要がある。

以上のことは、離脱の基因が株式の外部への売却による離脱(譲渡損益が生じる)であろうと、外部の法人との合併等による離脱(譲渡損益は生じない)であろうとその理由は問わない。

 

【例】P社がS₂株式の10%を外部に売却した。

この場合、P社はS₂株式の10%相当分は売却したことで譲渡損益が生じるが、残りの70%保有分についてもS₂株式の帳簿価額の修正する。

また、S₁社は株式を売却したわけではないので譲渡損益は生じないが、S₂社及びS₃社が離脱するに際し、保有するS₂株式(20%)及びS₃株式(50%)の帳簿価額の修正を行う。

この保有株式についても帳簿価額の修正を行うのは、将来の株式譲渡に伴う譲渡損益額の計算に備えるためである。

連結子法人の帳簿価額の修正の詳細については、連結納税の取止めを含めて、次節「Ⅳ.連結子法人株式の帳簿価額の修正」において解説する。

 

 

(11)離脱があった場合の中間申告額

前連結事業年度に離脱があった場合

前事業年度において離脱があった場合には、その連結子法人は前連結事業年度開始の日から離脱の日の前日までは連結法人として単体申告することとなるため、前連結事業年度の連結確定法人税額には含まれていない。

そのため、離脱した連結子法人分については特に調整は必要としない。

 

【例】

 

【解答】

 

②当連結事業年度(上期)に離脱があった場合

当連結事業年度の上期において離脱した連結子法人があった場合における前期実績に基づく中間申告額の計算は次のようになる(法81の19②)。

 

【例】

 

【解答】