(1)趣旨

資源開発事業等にたずさわる特定の法人の株式を取得した法人に対し、その特定の法人株式等の価格の低落や特定の法人に対する債権の貸倒れによる損失に備えるため、一定の条件のもとに一定の積立限度額を損金の額に算入することが、租税特別措置法において規定されている。

このように、海外投資等損失準備金の他にも特定の政策目的のために租税特別措置法においてその多くは時限立法として(ただし適用期間の延長も多い)、一定の積立額の損金算入が認められている。その他の規定としては次のようなものがある。

・特定災害防止準備金(措法56)

・原子力発電施設解体準備金(措法57の4)

・保険会社等の異常危険準備金(措法57の5)

・探鉱準備金又は海外探鉱準備金(措法58)

 

 

(2)適用要件(措法55)

1.適用法人 青色申告法人であること

清算中の法人でないこと

2.適用対象 特定法人(※1)の特定株式等(※2)の取得
3.適用時期 平成30年3月31日までの期間内の日を含む事業年度
4.経理方法 ①損金経理又は、

②適用年度の決算の確定の日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる方法

5.明細書等の添付 確定申告書に損金算入に関する記載をし、積立金の計算に関する明細書、その他特定法人に関する経済産業大臣の認定書の写しの添付が必要

(※1)特定法人

①資源開発事業法人

国外で石油や金属鉱物などの資源の採取等を事業としている法人(③は除く)

②資源開発投資法人

上記①の法人に係る投融資等の事業を行っている法人(④は除く)

③資源探鉱事業法人

上記①の法人のうち、資源の探鉱等の事業に限定して事業している法人

④資源探鉱投資法人

上記②の法人のうち、③の法人への投融資事業を行っている法人

(※2)特定株式等

上記(※1)の①~④の法人の設立や増資にあたり取得した株式のうち、この株式等に係る資金が上記法人の資源の探鉱又は開発の事業に充てられること等について経済産業大臣が認定したもの。

 

なお、平成26年4月1日前に取得をした特定株式等の範囲は、

 

 

(3)積立限度額

株式等の取得価額×一定割合(注)

(注)

特定法人 割  合
①資源開発事業法人(③に該当する法人を除く。) 100分の30
②資源開発投資法人(④に該当する法人を除く。) 100分の30
③資源探鉱事業法人 100分の70
④資源探鉱投資法人 100分の70

なお、平成26年4月1日前に取得した特定株式等については次のとおりである。

 

特 定 法 人 特定株式等 割 合
① 資源開発事業法人(③に掲げる法人に該当するものを除く。) 新増資資源株式等又は購入資源株式等 100分の30
② 資源開発投資法人(④に掲げる法人に該当するものを除く。) 新増資資源株式等 100分の30
③ 資源探鉱事業法人 新増資資源株式等又は購入資源株式等 100分の90
④ 資源探鉱投資法人 新増資資源株式等 100分の90

 

 

(4)準備金の取崩し

積立事業年度終了の日の翌日から5年を経過したもの(以下「据置期間経過準備金額」という。)がある場合は、その据置期間経過準備金額について、その当初の積立額を次の算式によって算定した金額を益金の額に算入する(措法55③)。

 

 

(注)1ヵ月未満の端数は、1ヵ月とする(措法55⑦)

 

以上の他、特定法人の株式等の全部または一部を有しないこととなった場合や組織再編により特定法人の株式等が移転した場合などの特定の理由が生じた場合においても取崩しを要することとなる。(措法55④⑤、措令32の2⑦⑧)。