配当還元方式の利用は株価対策の劇薬

Q. 配当還元価額の利用は、自社株の節税に効果があるのでしょうか。

A

劇薬にも似て効果的である反面、副作用があることも認識しておく必要があります。

 

解説

前回の一問一答で配当還元価額の計算ルールはおわかりいただけたものと思います。

そこで、今回はこの配当還元価額方式を利用した株価対策を検討してみます。

この対策は節税効果という面にだけ着目すれば、即効性があって、節税には劇的な効果が期待できます。

 

ここで、自社株の税金に悩んでいる社長に対し、

私 「社長のお持ちの自社株式の評価を直ちに半分にして差し上げましょうか。」

社長「えっ!そんな手品みたいなことができるんですか。」

私 「そんなの簡単ですよ。社長のお持ちの株式を半分、私に譲ってください。」

賢明な読者の方はもうお気づきになったことでしょう。

 

この時、私の頭の中では、配当還元価額による株式譲渡を描いているのです。

 

前回の計算例で言えば、仮にこの会社の株価評価方法が純資産価額方式で、税引後純資産が3億円であったとしますと、1株当たり株価は15,000円となります。(純資産10億円なら50,000円です。)

それが配当還元価額では、何と1株当たり株価は700円なのです(無配にすれば250円まで引下げ可能)。何と純資産価額の約20分の1以下となります。

 

ところで、私への株式譲渡は現実味がないかもしれませんが、これが私ではなく役員や従業員だったらどうでしょう。

少しは現実味を帯びてくるのではないでしょうか。

これらの人たちに対しても配当還元価額での株式譲渡が可能なのです。

以上のように自社株に対する節税対策としては、配当還元価額の利用は劇薬にも似た効果が期待できます。

(なお、この配当還元価額方式を利用した株式分散に関しては「事業承継50問50答」のQ26(配当還元方式の適用)を参照ください。)

 

しかしながら、劇薬には効果の一方で、副作用も強いものです。

そこで、次回はこの副作用の一つとして、過去に税務当局に否認され、100億円もの多額の追徴課税がなされた事例をご紹介しますので乞うご期待を!

本コラムは私見であり、情報の正確性・完全性について保証するものではありません。

書籍のご購入はこちら