利益との付き合い方

2016年5月10日

民主党政権から自民党政権に移行し、ここ数年、株価・景気ともに安定的に回復基調になっているように感じます。しかし、個別企業の立場からは、ここに至るまでの長い期間、株価低迷、物価の低下(低価格競争)に象徴されるような長い景気低迷期を必死になって乗り越えてきたのではないかと思います。一方、回復基調にあるという論は、大企業と一部の中小企業にのみに当てはまるというような状であり、多くの中小企業は、依然として、長い低迷期にあるのではと推察しております。さらに最近の世界経済の不安定な状況はさらにこの状況に拍車をかけているように感じます。

中小企業にとっては利益が出にくい経済環境のもとに置かれているのが実情ではないかと推察しております。特に、小規模企業では毎期赤字続きに苦しめられている実情に変化はないのではないかと考えています。大企業は、アベノミクスとやらの効果が、多少、行き届き利益体質の回復傾向に入っているようです。その恩恵下にある一部の中小企業にも良い影響は出ている模様です。

最近、大企業の不適正会計問題が話題になっています。その不適正会計は、長い経済低迷期に抱えた赤字体質を覆い隠し、あたかも利益が出ているように表現したことを不適正会計と称しているようです。粉飾決算とはどう違うのか理解に苦しむ様ではありますが。
利益との付き合い方は、企業が置かれた立場により様々ではないかと考えます。例えば、上場会社と非上場会社、非上場会社でもオーナー企業と複数の株主が存在し組織的経営を求められる企業、しっかり金融機関から借金している企業、何とか自己資金で経営している企業、小規模業でも従業員を抱えている企業、家族だけで経営している企業等々。それぞれの企業で利益に対しての付き合い方が変わります。

大企業では、利益は大事な伴侶のような存在です。常に利益という伴侶が存在していなければ、企業を取り巻くご近所(利害関係者)から信用を勝ち取れない出来の悪い勝手気ままな独身者のように言われます。そのため、利益に対する経営者の意識は高く、この意識の高さが時として、不適正会計と称されるような騒ぎを引き起こします。また、常日頃、伴侶の満足度を高めるための努力に邁進している姿が良き夫(経営者像)となるかと思います。この点からは、大企業の経営者は、気まぐれな伴侶に気を遣い、ご近所にも気を遣う良き夫としての能力と存在感が求められるものと推察しております。

中小零細企業での利益はどのように理解すべきでしょうか。利益が出ればその一部はまず税金となります。さらに言えば、非公開会社といえども、株主が存在すれば配当金としての流出も伴います。一方、利益は、いざというときの貯蓄にもなりますし、借金するときの信用力にもなります。また良き取引先とのご縁にもつながる大事な存在です。しかし、大企業のように、常に、伴侶のように居てくれる前提でのお付き合いが難しいのです。古い言葉かもしれませんが、大企業は嫁取りという点では三高ですが、中小企業はそこに至っておりません。ある意味、将来を期待される、収入の不安はあるものの好青年ということになるのでしょうか。そういう点では、恋人(利益)のようなものかもしれません。しかも、気まぐれで、移り気な恋人といったところでしょうか。
気まぐれで、移り気な恋人であるからこそ、付き合い方が大変です。でも、そんな恋人でもその存在感は大きく、しっかり引き留めておかないと将来を期待される好青年もただの出来の悪いやんちゃな青年になってしまいます。

次回の稿で、中小企業の気まぐれで移り気な利益との付き合い方を考えてみたいと思います。

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