(1)制度趣旨
持続的な賃上げと生産性向上のための設備投資を強力にバックアップする目的で、平成25年度税制改正において創設された「所得拡大促進税制」を改組して、「賃上げ及び投資の促進に係る税制」として引き続き制定されたものである。
そして、この特別控除制度は、次の2つの制度から成っている。
(注)中小企業者等 ( ペ-ジ)参照・
(2)適用要件(措法42の12の5①②)
上記のうち③以外はⅣ.-1原則、Ⅳ.-2中小企業者等の特例の両方に共通して求められる要件である。
【雇用者・国内雇用者・継続雇用者とは】
(※1) 雇用者給与等支給額
適用年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される(注)国内雇用者に対する給与等の支給額をいう(措法42の12の5③四)。
ただし、国等からの支給助成金など給与等に充てるための支給額は除かれる(措通42の12の5-2)
(注)棚卸資産等の取得価額に算入された給与等を含めることはできる(措通42の12の5-4)。
(※2) 比較雇用者給与等支給額
適用年度の前事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入される(注)国内雇用者に対する給与等の支給額をいう(措法42の12の5③五)。
ただし、給与等の支払いに充てるための他の者から受ける金額は除かれる。
(注)同上(※1)
<適用年度と前事業年度が異なる場合の比較雇用者給与等支給額の調整>
① 前事業年度月数 > 適用年度月数 の場合
② 6月 > 前事業年度月数 < 適用年度月数 の場合
③ 6月 ≦ 前事業年度月数 < 適用年度月数 の場合
(※3) 継続雇用者給与等支給額
雇用者給与等支給額のうち、継続雇用者に対する適用年度の給与等の支給額をいう(措法42の12の5③六)。
(※4) 継続雇用者比較給与等支給額
継続雇用者に対する前事業年度の給与等の支給額をいう(措法42の12の5③七)
<適用年度と前事業年度が異なる場合(下記②、③)の前事業年度給与等支給額の調整>
① 適用年度月数 = 前事業年度月数の場合
② 適用年度月数 > 前事業年度月数 の場合
③ 適用年度月数 < 前事業年度月数 の場合
(※5) 国内設備投資額
国内設備投資額とは、適用年度において取得等した国内資産(注)で、適用年度終了の日において有するものの取得価額の合計額をいう(措法42の12の5③八)。
(注)国内資産とは、国内の事業の用に供される減価償却資産をいう(措令27の12の5⑰)。
ただし、専ら国内向け事業の用に供する資産であっても、国外に所在するものは国内資産に該当しない。
(※6) 当期償却費総額
当期償却費総額とは、法人が有する減価償却資産につき適用年度においてその償却費として損金経理した金額(注)の合計額をいう。
(措法42の12の5③九)
(注)特別償却準備金の剰余金の処分による積立額を含む。
(※7) 教育訓練費
その適用法人の国内雇用者の職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために支出する費用で、次のものをいう。
(措法42の12の5③十、措令27の12の5⑱)
① 適用法人が自ら行うために支出した費用
② 外部委託した場合の委託費用
③ 外部セミナ-等の参加費用
(※8) ① 比較教育訓練費の額 <Ⅳ-1 原則の場合>
② 中小企業比較教育訓練費の額 <Ⅳ-2 特例の場合>
(※9) 措法42の12との重複適用における税額控除限度額の調整
重複適用は可能であるが、政策目的が重複するため、税額控除限度額の計算において調整(減額)がもとめられている(措令27の12の5①)。
(※10) 当初申告要件が必要
修正申告等で新たにこの制度の適用を受けることはできない。
(措法42の12の5⑤)
(3)特別控除額
【説例】
【解答】
(1)判定
① 資本金1億円以下で、大規模法人による株式所有はないので、中小企業者に該当する。
② 295,000千円 > 280,000千円
以上から、中小企業者等の特例による特別控除の適用ありと判定される。
(2)上乗せ控除の可否判定
② 中小企業等経営強化法による認定を受けている。
以上のうち、①の要件は満たさないが、②の要件を満たしている。
①と②の要件はいずれか1つを満たせばよい。
③ 0.038・・・・ ≧ 2.5%
(上記⑴③)
以上から、上乗せ控除可能と判定される。
(3)特別控除額
① 税額控除限度額
(295,000千円 - 280,000千円)× 25%= 3,750千円
② 税額基準額
50,000千円 × 20% = 10,000千円
③ 特別控除額
① < ② ∴ 3,750千円