(1)試験研究費の総額に係る特別控除

1.適用要件(措法42の4①)

① 青色申告書提出法人であること。

 

② 当期に損金算入される試験研究費の額があること。

③ 中小企業者に該当する場合は、次の「(2)中小企業技術基盤強化に係る特別控除」を選択していないこと。

④ 合併による解散以外の解散の日を含む事業年度及び清算中の事業年度でないこと。

⑤ 確定申告書等に明細書(別表6(6))の添付が必要。

2.適用期間

令和3年4月1日から令和5年3月31日までに開始する事業年度(2年間)

.特別控除額

(注1)控除割合

イ.原則

増減試験研究費割合(注2)に応じて、次のとおりとなっている。

(注1)増減試験研究費割合(措法42の4⑧三)

(注2)比較試験研究費の額(措法42の4⑧五)

当期首前3年間の試験研究費の額の平均額をいう。

ロ.試験研究費割合(注3)が10%超の場合の税額控除割合の特例(措法42の4②ニ)

【算式】

【例】

【解答】

(※2)税額基準額40%の特例

1.趣旨

本規定は、ベンチャー企業の研究開発を促進するために設けられた。

設立初期の研究開発投資等により過大な欠損金額が生じた場合、その後投資の効果により黒字化(所得が生じる)しても、所得金額の50%までしか欠損金の控除が認められないこととなる。

そこで、欠損金の控除限度額を2割増しの70%相当とすることの代わりに同等の節税効果とするため税額控除率を原則の25%から15%上乗せして40%とされた。

2.適用要件

①適用対象法人

法第57条第11項第3号の規定する欠損金控除限度額の特例の対象となる新設法人であること。

この特例とは、設立から7年間は所得金額の100%が欠損控除可とするものである。

つまり、この間は税金は生じないので税額控除もないことになる。

②適用年度

設立から10年以内。

ただし、上記①で述べたように、7年間は所得が発生しても税額は生じないので、実際に税額控除が適用できるのは8年目から10年目までということになる。

③翌期繰越欠損金額があること。

       適用年度終了時においてなお、翌期繰越欠損金を有していること。

以上を図示すると次のようになる。

(※3)試験研究費割合(注)が10%を超える場合の税額基準額の特例(措法42の4①⑤)

つまり、試験研究費割合が10%を超える場合には、税額基準額25%に10%を上限としてその試験研究費割合が「10%を超える割合の2倍」の割増控除額を認めるという趣旨である。結果として、以下の(※4)を除けば、最高35%までということになる。

(注)試験研究費割合(措法42の4⑧六、十一、措令27の4㉙)(※1)(注3)と同じ

(※4)基準年度比売上金額減少割合(注)が2%以上であり、かつ試験研究費の額が基準年度の試験研究費の額を超える場合の特例

(2)中小企業技術基盤強化に係る特別控除

1.適用要件(措法42の4④)

(注)中小企業者等(措法42の4⑧七、八、措令27の4⑫)

中小企業者等とは、中小企業者又は農業協同組合等をいい、そのうち中小企業者とは、 資本金額が1億円以下の法人をいう。

ただし、次のイ.及びロ.に該当する場合は中小企業者に該当しない。

又、ハ.については適用が停止されている。

イ.同一の大規模法人(資本金額1億円超の法人又は、大法人(資本金5億円以上の法人)による完全支配関係(100%保有)のある普通法人)による2分の1(50%)以上を所有されている場合

ハ.適用除外事業者(措法42の4⑧八)

適用除外事業者とは、中小企業者のうち当期首前3年間の平均所得金額が15億円超の法人をいう。

停止措置は、平成31年4月1日以後開始年度より適用される。

2.適用期間

令和3年4月1日から令和5年3月31日までの開始事業年度

3.特別控除額(措法42の4④)

(※1)増減試験研究費割合9.4%超の場合の税額控除割合の特例(措法42の4⑤一)

なお、中小企業者等以外の法人との違いは、基本となる控除割合10.145%と12%の違いのみならず、中小企業者等には増減試験研究費割合が9.4%以下の場合には特例がないことである。

したがって、9.4%以下の場合は原則の12%となる。

(※2)試験研究費割合10%超の場合の税額控除割合の特例(措法42の4⑥)

イ.増減試験研究費割合9.4%超の場合

ロ.増減試験研究費割合9.4%以下の場合(増減試験研究費割合9.4%超の特例適用なし)

(※3)増減試験研究費割合9.4%超の場合の税額基準額の特例(措法42の4⑤一)

原則の25%に10%が加算され35%となる。

(※4)試験研究費割合10%超の場合の税額基準額の特例(措法42の4⑥)

イ.上記(※3)の35%上限特例の適用を受ける場合

この場合は、税額基準額の本特例の適用はないこととなる。つまり、

ロ.上記(※3)の35%上限特例の適用を受けない場合又は、増減試験研究費割合9.4%以下の場合

つまり、試験研究費割合が10%を超える場合には、税額基準額25%にその「10%を超える割合の2倍」(ただし、10%を上限とする。)の割増控除額を認めるという趣旨である。

増減試験研究費割合9.4%以下の場合であっても試験研究費割合が10%超であれば、結果として、最高35%までということである。

増減試験研究費割合が9.4%以下かつ、試験研究費割合が10%以下の場合には、原則通り25%が限度となる。 

(※5)基準年度比売上金額減少割合が2%以上であり、かつ試験研究費の額が基準年度の試験研究費の額を超える場合の特例(注)

 (注)前述(1)3.ハ参照。

【例

【解答】

1.増減試験研究費割合

∴増減試験研究費割合8%超の場合の特例適用有り

2.試験研究費割合

∴試験研究費割合10%超の特例適用有り

3.税額控除限度額

①控除割合

②控除限度額

 

4.税額基準額

増減試験研究費割合9.4%超の場合に該当するため、35%の上限規定の適用を受けることができる。

560千円 × 35% = 196千円

5.特別控除額

3. < 4.   ∴189千円

以上を図示すると次のようになる。

本例においては、特例適用なければ(原則) 140千円 (144 > 140)の特別控除しかできなかったが、控除限度額の特例及び税額基準額に35%の特例を適用することにより、49千円の特別控除額の増加となる。

(3)特別試験研究費の特別控除

1.適用要件

(注1)特別試験研究費(措法42の4⑧十、措令27の4㉗㉘)

特別試験研究費とは、次の試験研究等に係る試験研究費をいう。

イ.国の試験研究機関等、大学等その他の者と共同して行う試験研究

ロ.国の試験研究機関等、大学等又は特定中小企業者に委託する試験研究

ハ.特定中小企業者からその有する知的財産権の設定または許諾を受けて行う試験研究

ニ.その用途に係る対象者が少数である医薬品(希少疾病医薬品)に関する試験研究

(注2)特別試験研究費の額(措令27の4㉗㉘))

特別試験研究費の額は、法人の任意の支出額ではなく、それぞれの特別試験研究の内容により、特別研究機関等の長等が認定した金額、監査や確認などを受けた金額をいう。

2.特別控除額(措法42の4⑦)

【設例】

【解答】

1.適用判定

当社は資本金2億円なので中小企業者以外の法人に該当する。

2.試験研究費の額

3.試験研究費の総額に係る特別控除

(1)増減試験研究費割合及び試験研究費割合と控除割合

①増減試験研究費割合

②試験研究費割合

③控除割合

(2)税額控除限度額

30,000,000円 × 0.140 = 4,200,000円

(3)税額基準額

(4)特別控除額

(2) < (3)   ∴4,200,000円

当社は、資本金の額が2億円なので中小企業者には該当しない。

したがって、「中小企業技術基盤強化に係る特別控除」の選択適用はできない。

4.特別試験研究費の特別控除

(1)税額控除限度額

12,500,000円 × 30% = 3,750,000円

(2)税額基準額

(70,000,000円 × 23.2%) × 10% = 1,624,000円

(3)特別控除額

(1) > (2)   ∴1,624,000円

5.特別控除額合計

3. + 4. = 5,824,000円