(1)外国法人税の範囲

外国税額控除の対象となる「外国法人税」は、外国の法令に基づいて法人の所得を課税標準として課される税とされている(法69①、令141①)。

しかしながら、外国の法令の中には外国税額控除の対象となる外国法人税と言えるかの判断を巡って問題が生じるものも存在する。

そこで、判断基準として以下のものが規定されている。

(2)控除対象とならない外国法人税(控除対象外外国法人税)

外国法人税に該当しても、以下の外国法人税は外国税額控除の対象とはならない(法69①、令142の2)。

1、所得に対する負担が高率な部分の金額

 

2、内国法人の通常行われる取引とに認められない取引に係る外国法人税額

3、日本で法人税が課税されない金額に係る外国法人税額

 

4、外国関係会社合算課税の適用やコーポレート・インバージョン税制の

適用を受ける外国法人から受ける配当等が益金不算入となる剰余金の

配当等の額を課税標準として課税される法人税額

5、租税条約による限度税率超過額部分

1、所得に対する負担が高率な部分の外国法人税額

① 一般(下記②以外)の外国法人税の高率な部分の金額(令142の2①)。

課税標準に対する外国税額が35を超える部分の金額は、日本の法人税、住民税及び事業税の実効税率を超えていると考えられ、外国法人税が課されたとしても二重課税とならないため外国税額控除の対象とはならない。

ただし、超過部分は損金算入することはできる。

 

② 利子等に対し源泉徴収された外国法人税の高率な部分の金額(令142の2②)

外国債等の利子及び国外業務者に対する業務上の貸付利子(法69④六、八)等については、上記①によらず、法人の所得率(※)によって以下のように高額負担部分を判定する。

 

【例】

 

【解答】

所得率10%以下なので、利子収入の10%(100×10%=10)を超える5(15-10=5)が高率な部分の金額となる。

(※)所得率

イ.個々の利子収入についての所得率ではなく、企業全体の所得率を用いる。

ロ.直近3年間の平均所得率を用いる(期間的変動の影響を軽減するため)。

 

【例】

 

【解答】

 

2、内国法人の通常行われる取引とは認められない取引から生じた所得に課される外国法人税(令142の2⑤⑥)

通常行われる取引とは認められない取引とは、特殊関係者に対する特に有利な条件である貸付取引等をいい、その貸付債権から生ずる利子収入に係る外国源泉税は外国税額控除の対象とはならない。

3、日本で法人税が課税されない金額に対して課される外国法人税(令142の2⑦)

① みなし配当等を生じる事由(法24①)で、配当等の額の益金不算入規定を受ける交付される金銭等に課される外国法人税のうち、取得価額から成る部分の額

【例】

つまり、取得価額に対応する外国税は、投下資本の回収に相当する部分であるから、所得を構成しない金額に相当する外国税ということになり控除対象とはならない。

② 租税条約に基づく法人の所得金額に減額があった場合において、相手国居住者等(この場合内国法人)に支払われない金額を益金不算入の規定を受ける剰余金の配当等に相当する金銭の支払いとみなして課される外国法人税

③ 外国子会社からの配当等の額の益金不算入規定(法23の2①)を受ける配当金等に課される外国法人税

外国子会社からの剰余金の配当等については、所得免除方式により二重課税が排除されているため外国税額控除の対象とはならない。

④ 国外事業所等から本店(内国法人)への支払

支払時に課される外国法人税は支払金額が日本の法人税の課税対象所得として認識されないため、二重課税となっていないことから外国税額控除の対象とはならない。

4.外国関係会社合算課税の適用や、コーポレート・インバージョン対策

合算課税の適用を受ける他の外国法人からの配当等で、配当等が益金不算入となる剰余金の配当等の額を課税標準として課される外国法人税の額

詳細については「第26章外国関係会社合算課税Ⅴ.」参照。

5.租税条約による限度税率超過税額部分

租税条約に定める限度税率を超える税率により外国法人税を課された場合、その超過分に係る税額は、後日、限度税率の適用申請等により還付されるため、外国税額控除の対象とならない。

(3)控除対象外国法人税

控除対象外国法人税とは、上記(1)の外国法人税のうち上記(2)の控除対象外外国法人税を除いたものをいう(法69①、令142の2)。