(1)任意償却(令64①一)

会計上も認められている繰延資産は、繰延資産の帳簿価額が償却限度額とされているので、任意の時期に任意の額を償却することができる。

償却限度額=その繰延資産の額-既に損金の額に算入された金額

(2)均等償却(令64①二)

税法特有の繰延資産については、支出の効果の及ぶ期間に応じて、次の算式により均等に計算する。

(注)1.端数処理(令64④)

月数に1月未満の端数があるときは、これを1月とする。

2.償却開始日の特例(基通8-3-5)

固定資産を利用するための繰延資産となるべき費用を支出した場合において、その固定資産が建設等に着手されていないときは建設等に着手した時から償却する。

 

1.分割払の繰延資産の償却(基通8-3-3)

<原則>分割払による総額が確定している場合であっても、その総額を未払金に計上して

償却計算はできない。

この場合、各分割支出金額ごとに償却することになるが、2回目以降の支出金額については、当初支出金額との累計額が均等償却する場合のその計算の基礎となる繰延資産の額ということになる(つまり、分割支出金額を順次繰延資産に加えていく)ので、必ずしもそれぞれの支出金額ごとに各別に償却することにはならないのであるから注意を要する。

<例外>分割払いの期間がおおむね3年以内の短期のものは総額により償却計算できる。

【例】

繰延資産(償却期間5年)を各年度の期首に20万円ずつ4年間で計80万円を分割払した場合

分割期間 4年 ≧ 3年

∴総額を未払金に計上(繰延資産80/未払金80)して

償却計算することはできない。

(※)長期分割払いの負担金の損金算入(基通8-3-4)

次の要件に該当する負担金は、支出した日の属する事業年度の損金とすることができる。

<適用要件>

① 繰延資産の内容

公共的施設又は、共同的施設の設置又は改良に係る負担金

② 次のいずれにも該当すること


イ.負担金の支払期間

負担金の額が、その繰延資産の償却期間に相当する期間以上の長期間にわたり分割して徴収されるものであること

ロ.分割負担額

  分割負担金の額が、おおむね均等額であること

ハ.負担金支払開始時

  負担金の徴収がおおむねその施設の工事着工後に開始されること

2.支出の効果の及ぶ期間(償却期間)

「支出の効果の及ぶ期間」については明確な把握は難しいことから、一般的なものについては以下のように法人税基本通達において償却期間が定められている(基通8-2-3)。

(※)償却期間の端数処理(基通8-2-3(注)2)

1年未満の端数切捨て(10.5年⇒10年)

(注1)国等に提供した所有道路等の耐用年数(基通8-2-3(注1)

15として、この表を適用する

(注2)公共下水道に係る受益者負担金の償却期間

①都市計画法等による負担金…6年

②下水道法第19条による負担金…15年

(注3)会館等の建設負担金(基通8-2-4)

負担者の属する協会等の本来のように供される会館等の建設負担金の償却期間は次のようになる。

 

(注4)例えば、商店街等における共同のアーケード、日よけ、アーチ、すずらん灯などが該当する。

【設例1】

当社(3月決算)工場正門前の市道(一般の人も通行している)の舗装の負担金として市当局に対して当期の9月10日に1,440,000円を支出し、全額費用に計上した。

 

(注)舗装道路の耐用年数は15年である。

(1)繰延資産の判定

当社も便益を受ける道路舗装(公共的施設の改良)費用の負担金で繰延資産に該当する。当社が専用に使用するものではなく「一般の人も通行している」ことから、償却期間は「耐用年数の」となる。

(2)償却計算

①償却期間

 

②償却限度額

 

③償却超過額

1,440,000円-140,000円=1,300,000円(加算・留保)

【設例2】

当社(3月決算)は、所属するA協会の会館建設に当たり、その建設資金に充てるため、1,800,000円の負担金を支出し、費用に計上した。なお、会館は鉄筋コンクリート造3階建てで、1階部分は店舗として他に賃貸し、2~3階部分は協会の本来の用である事務所、会議室として使用している。なお、当期の11月10日に建設に着手している。

(注)会館の耐用年数は50年である。

(1)繰延資産の判定

自己が便益を受ける所属団体の会館建設負担金で協会等の本来の用に供されている部分は繰延資産となる。一方、協会等の本来の用に供されていない部分は寄附金とされる。従って、180万円×=120万円は繰延資産、180万円×=60万円は寄附金となる。

(2)償却計算

①償却期間

 

②償却限度額

 

(※)償却は建設に着手した時からなされる。

③償却超過額

1,200,000円-50,000円=1,150,000円(加算・留保)

【設例3】

当社(3月決算)は、電子計算機(耐用年数4年、契約期間3年)の賃借に係る契約を締結し、当期の7月10日から事業の用に供している。なお、この電子計算機の賃借に伴い、賃借料のほかに、当期の7月8日に据付費用240,000円を支払、その全額を費用に計上している。

(1)繰延資産の判定

電子計算機の賃借に伴って支出する据付費等の付随費用は繰延資産に該当する。

(2)償却計算

①償却期間

 

②償却限度額

 

③償却超過額

240,000円-90,000円=150,000円(加算・留保)

【設例4】

当社(3月決算)は、当期の12月5日に特約店等に対し当社の製品名を表示した広告宣伝用の自動車10台(1台当たりの取得価額720,000円、耐用年数5年)を贈与し、その支出額7,200,000円を広告宣伝費として費用に計上している。

(1)繰延資産の判定

広告宣伝のように供する資産の贈与費用は繰延資産に該当する。

(2)償却計算

①償却期間

 

②償却限度額

 

③償却超過額

7,200,000円-800,000円=6,400,000円(加算・留保)

【参考】 受贈側である特約店の処理

∴受贈益 4,800,000円を計上しなければならない。

車両運搬具 4,800,000 / 受増益 4,800,000

3.対象資産の滅失等(基通8-3-6)

繰延資産とされた費用の支出の対象となった固定資産の滅失又は契約の解除等があった場合には、その滅失又は解約等があった事業年度において、その繰延資産の未償却残高を損金の額に算入する。

4.少額の繰延資産の損金算入

重要性の観点から、「少額の減価償却資産の損金算入」同様、少額の繰延資産についても一時に損金算入することが認められている。

適用要件(令134)

①均等償却を行う繰延資産(税法特有の繰延資産)に該当する費用であること

②支出金額が20万円未満であること(※)

③経理方法として、支出事業年度に損金経理すること

(※)支出金額が20万円未満であるか否かの判定(基通8-3-8)

①公共的施設・共同的施設の負担金

一の設置計画又は改良計画につき支出する金額

(分割支出の場合は、支出時における見積額の合計額)

②資産を賃借するための権利金等、役務の提供を受けるための権利金等

契約ごとに支出する金額

③広告宣伝用資産の贈与費用

支出の対象となる資産の1個又は1組ごとに支出する金額