文書化制度については大きく分けて次の2つの制度があり、それぞれ次のようになっている。

(注1)「多国籍企業グループが作成する文書」は、OECDのBEPSプロジェクトの勧告を受け、平成28年度税制改正において整備されたものである。

(注2)連結総収入金額

売上高、営業外収益、特別利益など連結財務諸表に計上した全ての収益の額をいう(措通66の4の4-1)。

そして、連結総収入金額が1,000億円以上の多国籍企業グループを「特定多国籍企業グループ」という。

 

 

(1)特定多国籍企業グループが作成を要する文書比較(ローカルファイルは(2))

(注1)最終親会社等

グループの他の構成会社等の財務及び営業又は事業の方針を決定する機関を支配しているもの(親会社等)であって、その上に支配する会社がない会社をいう。(措法66の4の4④五、措令39の12の4⑤)。

(注2)代理親会社

グループの構成会社等で国別報告事項等をその構成会社等の居住地国の税務当局に提供するものとして最終親会社等が指定したものをいう(措法66の4の4⑥)。

 

(※1)①最終親会社等届出事項及び③事業概況報告事項は、原則として最終親会社等のみならず構成会社等である他の内国法人もそれぞれが提供しなければならないが、特例として、代表して一社(代理親会社等)が提出していれば他の構成会社等は提出する必要はない。

 

(※2)最終親会社等又は代理親会社等が外国にある場合の提出義務者

 

イ.原則(条約方式)

最終親会社等又は代理親会社等が居住地国の税務当局に提出した国別報告事項に関する情報は、租税条約等に基づく情報交換制度により日本の税務当局に提供されるため、原則としてグループの構成会社等である内国法人又は、PEを有する外国法人に提出義務はない。

ロ.例外(子会社方式)

提出した国別報告事項に関する情報が外国の税務当局から日本の税務当局に提供されないと認められる時(例えば、最終親会社等の居住地国との間で適格当局間合意がない場合など)は、内国法人又はPEを有する外国法人は提供義務が必要となる。

この場合には、上記(※1)の代表一社が認められている。

 

(※3)罰則規定

正当な理由なく②国別報告事項又は③事業概況報告事項を提出期限までに提出しなかった場合には、30万円以下の罰金が課せられる(措法66の4の4⑦、66の4の5③)。

 

 

(2)国外関連取引を行った法人が作成を要する文書(ローカルファイル)

国外関連取引を行った法人は、原則として「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類」(「ローカルファイル」という。)を作成することが求められる(措法66の4⑥、措規22の10①)。

このローカルファイルは、上記(1)の多国籍企業グループにおいても連結総収入金額いかんにかかわらず、国外関連取引を行う限りはすべて作成・保存が必要となる。

 

1.内容

ローカルファイルは、次の2つから構成されている。

① 国外関連取引の内容を記載した書類(措規22の10①一)

② 国外関連取引に係る独立企業間価格を算定するための書類(措規22の10①二)

①国外関連取引の内容を記載した書類

イ.当社及びグループの概要

ロ.国外関連者の概要

ハ.国外関連取引の詳細

ニ.国外関連取引に係る当社とA社の機能及びリスク

ホ.当社及び○社の事業方針等

へ.市場等に関する分析

ト.○社との国外関連取引に密接に関連する取引について

②独立企業間価格を算定するための書類

イ.独立企業間価格の算定方法

ロ.比較対象取引の詳細

なお、以上の具体的記載内容については平成29(2017)年6月に国税庁が作成した「移転価格ガイドブック」にサンプルとして記載されているので参考にされたい。

 

 

2.作成義務者

国外関連取引を行った法人

 

 

3.作成期限・保存期限(同時文書化)

ローカルファイルは、法人税の確定申告書の提出期限までに確定申告書と同時に作成しなければならない(措法66の4⑥)ことから「同時文書化」(※)と呼ばれ、原則として確定申告書提出期限の翌日から7年間(欠損金額が生じた事業年度については10年間)国内に保存しなければならない(措規22の10①②③)。

(※)同時文書化義務の免除

次のいずれにも該当する場合には、必ずしも確定申告書の提出期限までに作成する義務はない(しかし、ローカルファイルに相当する書類の作成は求められる)。

① 原則として前事業年度の国外関連取引金額(受取対価と支払対価の合計額)が

50億円未満であること。

② 原則として前事業年度の国外関連取引のうち、無形資産取引金額(受取対価と

支払対価の合計額)が3億円未満であること。

つまり、①の取引金額が50億円以上か②の取引金額が3億円以上かのいずれか1つに該当すれば同時文書化義務があることとなる。

 

 

4.提出義務・提出期限

① 同時文書化義務がある場合

税務当局の要請に基づき、調査対象法人は45日以内(ただしローカルファイル以外の関連事項等については60日以内)の当局が指定する日までに提出しなければならない。

② 同時文書化義務がない場合

60日以内の当局が指定する日

 

 

5.同時文書化義務違反等があった場合

上記4.の指定期限までにローカルファイルの提示または提出がない場合には、推定課税(措法66の4⑧、措令39の12⑬⑭)及び同業者に対する質問検査権の行使(措法66の4⑪⑫)ができる。

① 推定課税の方法

② 同業者に対する質問・検査権(シークレットコンパラブル=反面(はんめん)調査)

その独立企業間価格を算定するために必要があるときは、その必要と認められる範囲内において、その法人の国外関連者との取引に係る事業と同種の事業を営む者に対して質問し、その事業に関する帳簿書類を検査し、又はその帳簿書類の提出等を求めることができる。

 

 

6.確定申告書への添付義務

国外関連者との間で取引を行った場合には、「国外関連者に関する明細書」(法人税申告書別表17(4))を確定申告書に添付することとされている(措法66の4⑲、措規22の10⑦)。