本制度は関連者(※1)に対する支払利子等を通じた租税回避の防止を目的として創設されたため、一定の関連者に対する支払利子等のみが損金不算入の適用対象とされていたが、その後、2015年のBEPSプロジェクトの最終報告書(行動4「利子控除制限ルール」)において、第三者(非関連者)に対する支払利子等についても、多国籍企業グループにおいて、本来、税率の低い国にあるグループ企業が調達すべき資金をあえて税率の高い国の企業で借入れを行い、これを税率の低い国のグループ企業に出資をする等により税率の高い国の所得を軽減させるという所得の移転が行われることの指摘がされ、これを受けて令和元年改正において関連者への支払利子等か第三者(非関連者)への支払利子等かを問わず、本制度の制限対象とされることとなった。

つまり、利子の受領者が、支払者の関連者か否かではなく、支払利子等が適用対象となるか否かによって本制度の適用が判定されることになった。

そこで、法律の名称も従前の「関連者等に係る純支払利子等の課税の特例」から「対象純支払利子等に係る課税の特例」と変更された。

 

法人税率の高い国から低い国への所得移転を図ることで法人税負担を200(300-100)減少させることが可能となる。

そこで、本制度の適用により過大支払利子等は損金不算入とされる。

 

上記<ケース1>での本税制適用回避のために非関連者(第三者)を介在させることが考えられ、この租税回避に対処するために非関連者に対する支払利子等についても本税制の適用対象となった。

ただし、次のいずれかに該当する場合には、本制度は適用されない(措法66の5の2③)。

 

適用免除基準

つまり、上記②は、グループ全体で判定されるということである。

適用判定内国法人が上記①に該当せずとも、上記②に該当した場合は適用されないこととなる。

また、適用要件としては、確定申告書等に適用除外に該当する旨の書面及びその計算に関する明細書(別表17[2の5])の添付があり、かつ、その計算に関する書類の保存が必要とされる。

以上の書面及び明細書の添付は「当初の確定申告書」に限り認められている(ただし、ゆうじょ規定有り。)(措法66の5の2⑤)。

 

(※)関連者(措法66の5の2②四、措令39の13の2⑮⑰)

関連者とは、利子等を支払う内国法人との間に次のいずれかの関係にある法人又は個人をいう。

法人である関連者は外国法人に限らず内国法人についても該当することになる。

しかし、後述するように関連者支払利子等の額の範囲からは過少資本税制の場合と同様、利子等の受領者側で日本で課税されているものは除外されていることから、本制度が適用される関連者は実質上は外国法人に限られることとなる。

なお、個人である関連者についても同様である。

非関連者とは、関連者以外の者をいう(措法66の5の2②五)。