死亡退職金と自社株対策
2015-10-14
Q. オーナー社長が死亡した際に、死亡退職金を最大限支給することによって、自社株対策になると聞きましたが、本当でしょうか。
A
死亡退職金は自社株の純資産価額方式の計算上は負債となるため、純資産価額方式又は併用方式を適用する場合には自社株の評価額は下がります。
一方、死亡退職金は相続財産に加算されるため、全体として相続財産は増えてしまうケースが多いことに注意が必要です。
解説
(1) 死亡退職金を支給しない場合の相続財産
① 死亡時の状況
死亡時にオーナー社長が以下の会社の株式を100%保有しているとし、この会社の株式以外の財産は保有していないとします。
発行済株式総数 100株
1株当たり純資産価額 2,000,000円
1株当たり類似業種比準価額 500,000円
会社規模 小会社(特定の評価会社には該当しない)
② 相続財産
株式の評価額は、以下のようになります。
(500,000円×0.5+2,000,000円×0.5)×100株=125,000,000円
(2) 死亡退職金を支給する場合の相続財産
① 死亡退職金を支給する場合の純資産価額
一方、1億円の死亡退職金(弔慰金を除く)を支給することとした場合には、純資産価額方式の評価は以下のようになります。
1株当たり純資産価額 1,000,000円
② 相続財産
株式の評価額は、以下のようになります。
(500,000円×0.5+1,000,000円×0.5)×100株=75,000,000円
また、死亡退職金は、一定の非課税枠を超えるものは相続財産とみなされます。法定相続人数が3人の場合には、以下のようになります。
100,000,000-(5,000,000円×3人)=85,000,000円
したがって、相続財産の合計は以下のようになります。
75,000,000円+85,000,000円=160,000,000円
(3) 法人税法上の取扱い
死亡退職金は、法人税法上は原則として支給時の損金となるため、法人税の減税効果が見込まれます。
(4) まとめ
以上のように、死亡退職金を支給することによって、かえって相続財産が増えてしまうことがあります。
一方で、株式しか相続財産が無い場合には納税資金の確保が必要となるため、非課税枠を活用した一定額の死亡退職金の支給は有効であると考えられます。
相続税額及び法人税の減税効果を試算したうえで支給金額を決めることが、死亡退職金を活用した対策であると言えるでしょう。