平成29年度税制改正①
2017-01-06
Q. 事業承継税制に関する平成29年度税制改正について教えてください。
A
平成29年度税制改正において、①雇用要件の緩和、②相続時精算課税との併用などの事業承継税制の改正が行われました。
①雇用要件の緩和は、特に従業員5人未満の会社の1人が退職した場合にも許容されることになります。
②相続時精算課税との併用は、要件を満たさなくなった場合の税負担を減らす効果があるため、事業承継税制にチャレンジしやすくなります。
解説
今回は、平成29年度税制改正大綱にて公表された事業承継税制の改正について解説をします。
1.事業承継税制とは
事業承継税制とは、非上場会社の株式等について一定の場合に相続税・贈与税の納税が猶予される制度です。
2.平成29年度税制改正の改正点
平成29年度税制改正において、①雇用要件の緩和、②相続時精算課税との併用などの改正が行われました。
3.雇用要件の緩和
事業承継税制における雇用要件とは、事業承継税制の適用後5年間で従業員数の8割を雇用し続けなければならない、というものです。
今回の改正は、8割の計算をする際に、端数を切り上げていたところを切り捨てにすることとされました。
端数処理の問題ではありますが、従業員数5人未満の会社では、現行では1人が退職すると雇用要件を満たしませんが、改正後は雇用要件を満たすことになります。
4.相続時精算課税との併用
相続時精算課税とは、贈与時に一定の要件を満たした場合に、特別控除額(2,500万円)を控除した後の金額に、一律20%の税率にて贈与税を計算できる制度です(選択制)。
現行では事業承継税制と相続時精算課税の併用はできませんが、改正後は併用できることになります。
いずれも相続時に相続財産に加算して相続税を計算する(贈与時の価額)制度ですが、併用を認めることによって、事業承継税制の要件を満たさなくなった場合の税負担を軽減することができます。
すなわち、万一の場合の税負担を減らすことによって、事業承継税制にチャレンジしやすくなると言えます。
5.適用時期
この改正は、平成29年1月1日以後の相続、贈与に適用されます。