類似業種比準方式の標本会社が自社株対策に与える影響

Q. 類似業種比準方式の比較対象となる標本会社はどのように決まるのでしょうか。また、株価にどのような影響を与えるのでしょうか。

類似業種比準方式とは、非上場株式の評価方式の一つで、事業内容が類似する複数の上場会社の株価の平均値に、1株当たりの配当金額、年利益金額、純資産価額の比準割合を乗じて評価されます。

市場の株価や企業の業績が大きく変動した場合には、前年の類似業種の株価等に基づき試算をしても思いのほか差額が出てしまうことがありますので、特に注意が必要です。

 

 

解説

(1) 類似業種比準方式

非上場株式の評価の評価方法の一つとして、類似業種比準方式があります。

類似業種比準方式とは、事業内容が類似する複数の上場会社の株価の平均値に、1株当たりの配当金額、年利益金額、純資産価額の比準割合を乗じて評価する、特徴的な評価方式です。

具体的には、以下の算式にて計算されます。

20160215_類似業種比準方式

なお、類似業種比準価額の引き下げについては、別コラムにて触れたいと思います。

 

(2) 類似業種の株価等の標本会社

非上場株式の評価に類似業種比準方式を適用する場合には、国税庁ホームページに掲載される「類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について(法令解釈通達)(以下、「類似業種株価等通達」)」の数値を使用して計算すれば評価額が算出されるため、通常は比較対象の標本会社を意識することは少ないと思います。

標本会社の対象は、上場廃止が見込まれる会社等を除き、日本の証券取引所に上場している全ての内国法人が対象となります(地方証券取引所を含む)。

また、標本会社の業種分類は、評価会社と同じく「日本標準産業分類」に基づいて区分されます。

 

(3) 類似業種の株価等が変わるタイミング

しかし、最近の株式相場は乱高下が激しいので、類似業種(標本会社)の株価等がどのように変化するかについても検討をしなければなりません。

① 類似業種の1株当たりの配当金額、年利益金額、純資産価額

類似業種の1株当たりの配当金額、年利益金額、純資産価額は、年単位で変わります。

すなわち、平成27年1月1日~12月31日は同じ数値であるが、平成28年1月1日~12月31日はまた新しい数値に変わります。

② 株価

類似業種の株価は、課税時期の月を含む直近3ヶ月のいずれかと前年平均の4つの株価のうち、最も低い株価を選択することができます。

毎月の株価は毎年数回に分けて公表をしますが、前年平均は年単位(1月1日~12月31日)に変わります。

③ 類似業種の株価等の公表時期

類似業種の株価等は、例年6月頃に公表されます。

平成27年度の類似業種の株価等は、平成27年6月15日(平成27年6月1日付)に公表されました。

 

(4) 実務上の注意点

上記のとおり、類似業種の株価等は例年6月頃に公表されるため、例えば、1月~5月に類似業種比準価額を使用する相続または贈与が発生した場合には、前年の類似業種の株価等に基づき試算をしても、思いのほか差額が出てしまうことがあります。

特に市場の株価や企業の業績が大きく変動した場合には、その翌年の類似業種比準価額の変動に注意が必要です。

本コラムは私見であり、情報の正確性・完全性について保証するものではありません。

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